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リージョナルフィッシュ株式会社 梅川忠典氏インタビュー|起業に不可欠な知識・資金・仲間を得られる場

今回は、実際に技術イノベーション事業化コースを経て、リージョナルフィッシュ株式会社を立ち上げた梅川忠典氏に協力していただきました。起業のきっかけから、コース参加中、さらには現在のお話まで幅広いお話を伺うことができました。

リージョナルフィッシュ株式会社とは

2019年創業の京都大学発のベンチャー企業で、京都大学国際科学イノベーション棟の中に本社を構える。タンパク質クライシス等の食料問題や日本の水産業における課題解決をミッションとして掲げ、コア技術である「ゲノム編集」によって事業を展開している。可食部を増大させた「22世紀鯛」などが代表的な成果。2020年に東洋経済の「すごいベンチャー100」に京都・大阪から唯一選ばれるなど数多くの功績を残し、2021年12月開催のスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2021」では優勝を果たした。

  1. 技術で勝る日本を取り戻したい
  2. アイデアの原点になった「バックキャスティング」
  3. 手厚い資金面のサポート
  4. 今でもつながりのある当時の仲間たち
  5. 起業に必要なものを多く獲得できる技術イノベーション事業化コース

技術で勝る日本を取り戻したい

ーもとはコンサルティングファームや投資ファンドで働かれていたとのことですが、どういう経緯で起業を決心したのですか?

もともと、僕は学生時代から日本経済をよくしたいと思っていました。日本はよく「技術で勝って経営で負けている」と言われています。そこで、経営面から日本を支えると意気込んでいた経営コンサルタントになりました。実際は経営戦略のアドバイスはできても、その実行には関与できませんでした。そこで投資ファンドに転職したわけですが、大企業の買収前DD(精査)で日本の技術力というのはアジア諸国に負けていると気付きました。また同時に、日本企業は技術面で世界一、収益も上げていたが、次なる技術に効率的に投資できず、技術面でも負けたのではないかと思ったのです。逆に言えば、今ある技術の中でもトップクラスのもので起業をして、次の技術に効率的に投資をし続ければ世界と戦える企業になるだけでなく、日本経済もよくできるのではないかと思い起業を決心しました。

ー数ある起業家育成プログラムの中からこのコースを選ばれた決め手は何でしたか?

京大であれば、有望だが社会実装されていないシーズが多くあるのではないかと思ったからです。「トップクラスの技術」と「起業」の二つを考えたとき、このコースはまさにピッタリであると思いました。

アイデアの原点になった「バックキャスティング」

ープログラム内において、どういう経緯で現在のビジネスアイデアが生まれたのでしょうか?

グループディスカッションの中で、カイコを使った昆虫食ベンチャーを立ち上げようというアイデアが出ました。このアイデアを出すにあたって、プログラム中に講師の方に教わった「バックキャスティング」という考え方が非常に役立ちました。これは現在から未来ではなく、「未来のあるべき姿」から「未来を起点」に解決策を見つける思考法です。

僕の場合は、少し先の未来としてタンパク質クライシスというものに着目しました。人は豊かになればなるほど、炭水化物よりもタンパク質を摂取する傾向にあります。この現象と人口増加の掛け算によって、タンパク質の供給量が不足すると予測されていました。これがタンパク質クライシスです。そこで、牛や豚よりもはるかに少ない飼料や土地で、同じ量のタンパク質を生成できる昆虫食というのは「未来のあるべき姿」の足がかりになるのではないかと思ったわけです。

梅川さん 記事用写真2

ーアイデアの仮説検証する際、プログラム内でのフォローはありましたか?

はい。デザイン思考を取り入れた検証と、他の参加者たちに向けたプレゼンテーションをよく行っており、仮説検証のプロセスは整っていました。自分たちのアイデアと頻繁に向き合えたのは良かったです。

ー京大シーズへのアクセスは容易でしたか?

さらりとシーズをもらえるかと思っていたのですが、意外とそうでもなかったんですよ。アポだけ取ってもらい、その研究室を訪問するという形で、思ったより泥臭いと感じました。ですが、共同創業者である木下先生を訪問して、自分の提案と同時に日本経済をよくしたいという思いを語ると、そこからは円滑に進みました。このアカデミアの人たちを仲間に引き込む力というのは、今現在、他の研究機関と提携する際にもとても役に立っています。それに関して言うと、京都大学と手を組めているということも大いに役立っていますね。やはり京大は研究のレベルが高いと思われているところがあり、他の学術機関や研究機関と提携しやすいです。

手厚い資金面のサポート

ー起業するうえで、このコースに参加して特によかった点を教えてください。

京大のシーズを使いながら起業をしたことで、立ち上げ時に非常に良いスタートダッシュを切れた点だと思います。加えて、京大の助成金にアクセスしやすいんですよね。

ー資金面における京大側のサポートは充実していましたか?

はい。僕の場合リージョナルフィッシュの創業前に、京大GAPファンドプログラムに採択されて300万円を支援してもらいました。さらに、京大インキュベーションプログラムにも採択されて2年間の間、毎年3000万円を支援してもらっていました。つまり、大学のサポートのおかげで、起業前に6300万円を事業開発のための費用として使うことができました。この資金面のサポートのおかげで私たちはロケットスタートをきることができたと言えますね。また、グラントを取るにはどういう要素が必要かが分かったことも、その後スムーズに事業展開できた一つの要因だと思います。

今でもつながりのある当時の仲間たち

ーこのコースに参加していた他の仲間はどのような志を持っていましたか?

他の仲間は起業したいという強い想いや、新規事業を作らなければいけないという意識を持っており、やる気はすごくありました。実際、slack等でやり取りをする際も皆が積極的に意見を出し合っていました。

ー今でも、当時プログラムで知り合った仲間とのつながりは続いているのですか?

はい。僕の場合は、リーダー会といって各チームのリーダーでつながっています。新型コロナウイルスが流行する前までは定期的に集まって、刺激を受けていました。優秀な参加者たちとのつながりは今でも立派な財産です。

起業に必要なものを多く獲得できる技術イノベーション事業化コース

ー当時プログラムで学んだことや身に着けた知識・スキルの中で今現在最も役に立っているものを教えてください。

チームワークですね。起業前は、おおよそのことは1人で完結させるほうが早いし正確だと思っていましたが、実際会社として大きな夢を成し遂げたい時には、研究開発など自社だけではできないことが多く発生します。そこで、色々な企業やアカデミアと連携する中で、社内外含めて利害を調整しながら目標を共有し、役割分担することを大切にするようになりました。また、このコースは全く背景の違う人が集まっており、目標設定やそのために各人がすべきことを明確にする必要がありました。これはまさしく企業と同じマネジメントスタイルであり、今現在のマネジメントにも役立っていますね。

ー最後に、起業を志す若者、そして技術イノベーション事業化コースに申し込むか迷っている人に一言メッセージをお願いします。

この技術イノベーション事業化コースでは、新しい事業を創るために必要な知識やマインド及び仲間を獲得することができ、また意欲があれば京大のシーズにもアクセスできます。私は参加費25万円を自腹で払って参加したのですが、その価値は十分すぎるほどありました。本気で起業を志す方は是非参加を検討してみてください。

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PROFILE
梅川忠典
リージョナルフィッシュ株式会社 代表取締役/CEO
1986年生まれ。京都大学大学院を卒業後、コンサルティングファームやPEファンドで働く中で起業を志すようになる。技術イノベーション事業化コースを経て2018年に昆虫食ベンチャーであるエリー株式会社を設立。翌年に友人に譲渡し、リージョナルフィッシュ株式会社を設立して現在に至る。

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