/* Template Name: インタビュー */ 一社)スマートシティ・インスティテュート 南雲岳彦氏インタビュー|新規事業立ち上げには不可欠な起業家の考え方 | 京都大学技術イノベーション 事業化コース
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受講生の声
一社)スマートシティ・インスティテュート 南雲岳彦氏インタビュー|新規事業立ち上げには不可欠な起業家の考え方

今回は、社会人として働く一方で、事業化イノベーションコースに参加し、社内の新規事業である一般社団法人スマートシティ・インスティテュートの設立に大きく貢献された、南雲岳彦氏に協力していただきました。南雲氏自身の背景と、本コースでの様々な体験をもとに、事業創造に必要な力について語っていただきました。

【一般社団法人スマートシティ・インスティテュートとは】

2019年に設立された一般社団法人で、南雲氏が専務理事を務める。事務所所在地は東京都港区。日本におけるスマートシティの拡大と高度化を推進するための、ナレッジ&公民学連携プラットフォームとして設立され、500を超える会員とともに国のスマート化に寄与している。

発達障がいを持つ子供たちが一人でも生きていける世の中を

ー本コースのような起業家育成プログラムに入ることになった経緯をお聞かせください。

純粋に自分の興味のある活動を行っていく中で、起業に着地したというような感じでした。私の息子は先天性の自閉症でした。そこで、発達障がいの子供と、その父親が健康のために走る「Run4u」というアクティビティ兼啓蒙活動を主宰していました。そんな折、私は頸椎のヘルニアを患ってしまい、「親はいずれ死ぬ。走っているだけではだめだ」と思うようになりました。そして、この問題をテクノロジーの力で何とかできないかと考えるようになったのです。具体的には、親がいなくなっても、障がいを抱える子供たちの目や体の動きを感知して、言語化してくれるようなツールを開発できないかと思い、そのためには事業を起こす必要があると考えました。その後、ご縁があって本コースに参加した次第です。

ー本コースの雰囲気はどのようなものでしたか?

全体的にレベルは高かったです。個人として起業したい人は言うまでもないですが、企業から来ている方もやはりどこか優れている点があるから抜擢されているわけですし、皆熱量がありました。加えて、がちがちに制限がない点もよかったです。大人向けのコースなので課題のようなものが課せられることもなく、活動の自由度は高めでした。また、意識の高さだけでなく、コンテンツの質も良かったですね。

ー京大の技術シーズと、起業や新規事業の立ち上げというのは南雲さんから見て相性が良いと思いますか?

ポテンシャルの高さは、とても感じました。先ほども言ったように、私たちは目や顔の動きといった、障害児のデータをAIで言語化したい状態でした。本コースを通して、京大病院や京大医学部の先生と話す機会があったのですが、やはりたくさんのデータを持っているというお話をいただいたことを覚えています。大学ならではの知的資産はふんだんにあるなと思いましたね。

コースで得られた多種多様な起業知識

ー本コースで得られた起業知識の中で最も役に立ったものを教えてください。

ピボットですね。私の場合、まず「Run4u」からAIを活用した事業にピボットしました。しかし、諸条件が合わず、今度は私の会社の中で事業化しようとしたのですが、これもうまくいきませんでした。というのも、銀行系の会社だったため、障がい者のための子会社というのはあまりに距離がありすぎたんですよね。そこで再びピボットし、私の会社が発起人になって一般社団法人を設立することになったのです。要するに、何度もピボットを繰り返して、そのたびにスケールアップしてきたわけです。自閉症から発達障害全般の子供が対象になって、走る活動からテクノロジーになって、子会社から一般社団法人になって、最終的には街や国全体をスマート化するところにまで到達しました。そのように、「考え方を変えてもいいんだ」というところはずいぶん参考になりましたね。

ー他に役に立った考え方などはありましたか?

0→1の考え方ですね。私は元々、大企業で長らく経営企画をやってきたのですが、そういう大企業の中では0→1の考え方をすることがあまりないんですよ。なぜなら、既に何らかの基盤や引継ぎがあったりしますからね。なので、サラリーマンをやっている間は、全く何もないところから何か形のあるものを作るという経験は普通出来ません。その点、このコースを通して、事業創造のための、0→1の考え方を垣間見る機会があったことは、とても役に立ちました。

ー具体的に何か印象に残っている起業家のマインドセットはあるのでしょうか?

0から1を生み出す技法の一つとして教わった「バイオミミック」は印象的でしたね。自然や生物は、とんでもなく長い時間をかけて進化を遂げているので、その構造や機能を模倣することで新たなものを発明できるという考え方なのですが、アイデアのヒントを拾ってくる方法として非常に有効でした。また、ふっと世界の考え方が変わる転換点を意味する、インフレクションポイントも興味深かったです。これは、バックキャスティングで未来から逆算する場合と、今の世界の延長線を考えたときにちょうどぶつかる点とも捉えられます。講義の中で、自分のプロジェクトにおいてはどこがそのインフレクションポイントに当たるのかを考えるように言われたのを覚えています。

現在の事業では

ー現在、事業を展開していく中で先ほどの起業家のマインドセットや、0→1の考え方はどのように役に立っているのでしょうか?

本当に日々役に立っていますよ。スマートシティ・インスティテュートの活動は今や国のプロジェクトの規模にまでなりましたが、「突き抜け感」の根源にあるのはやはり0→1のマインドですね。既にあるものをやっても絶対に突き抜けないですからね。国家を動かす今になってもなお、あの時得られた考え方は活用していますし、実際通用もしています。

ー今になって改めて思う、南雲さんにとっての本コースの最大の良さとは何でしょうか?

投資家の声を聞けた点だと思いますね。サラリーマンをやっていると、社内で色々な人と触れ合う機会があるのですが、それでも日常生活の中で投資家の声を聞ける機会というのは滅多にありません。その点、本コースでは、投資家はどのように見ているのかという点をかなり生々しく聞けました。事業を立ち上げる上で、投資家に注目してもらうのは必要不可欠なので、その点はとても良かったです。

日本のデジタル化を推進して次の世代へ

ー今後の展望や事業目標をお聞かせください。

私が働いているスマートシティ・インスティテュートは、国のスマートシティ事業を支えるようなことをやっています。そして、今まさに、日本はスマートシティの本格導入のタイミングです。日本のデジタル化は遅れているとよく言われますが、私はいずれ日本は追いつき、輝くものが出てくると信じています。だからあと数年のうちに、そういう時代の基盤を作って、今の子供たちの世代にバトンタッチすることが自分の目標であり、ミッションであると思っています。

ー最後に起業や新規事業立ち上げを志す人、そして本コースの申し込みを検討している人にメッセージをお願いします。

今や起業のスキルというのは、読み・書き・そろばんと同じように、生きていく上での基本スキル知識となってきているように私は感じています。だからこそ、考える前にまずは飛び込んでみる。それが、最も学びを得るチャンスに繋がると思います。どうか考えすぎず、頑張ってください。

専務執行役員南雲
PROFILE
南雲岳彦
一般社団法人スマートシティ・インスティテュート 専務理事
1966年生まれ。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの企画管理部門、専務執行役員を務める。息子が先天性の自閉症であった経験から、発達障害のための活動を行っていく中で、テクノロジーを駆使したソリューションを提供できるスタートアップの設立を志す。その後、日本経済新聞社と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発起人になって設立した、スマートシティ・インスティテュートの設立に関与し、専務理事を務めるようになり現在に至る。

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